GUST NOTCH? DIARY

99%の誘拐

毎日新聞の記事で、先日の仙台の乳児誘拐犯は岡嶋二人の「99%の誘拐(ISBN:4062747871)」を参考にしたんじゃないか、というのをみた。

でも、この主張はかなり強引。

発煙筒と「火事だ!」の叫び声で親の注意をひき、幼稚園児を誘拐して5000万円の身代金を要求する−−という内容。根本容疑者は仙台市宮城野区の「光ケ丘スペルマン病院」(志村早苗院長)で、スプレー缶のようなものを掲げて看護師を威嚇。入院中の山田弓美さん(23)を「火事だ」という叫びで驚かせ、長男柊羽(しゅう)ちゃん(生後11日)を連れ去った。

発煙筒とスプレー缶では全然違うのでは?催涙スプレーで威嚇というのは良くあるだろうし。「火事だ」ということに意味を持たせるのならば、スプレーよりも煙の演出の方が重要だし。

容疑者が書いた脅迫文は漢字と片仮名で書かれていたが、小説に登場する脅迫文も片仮名書き。

「漢字と片仮名」と「片仮名」では印象が全然違うと思う。

容疑者は公衆電話から志村院長に電話し、電車でJR石巻駅へ向かわせた上、タクシーで三陸自動車道を走らせたが、小説でも犯人は電話などで新幹線や電車への乗り換えを次々に指示。仙台市内の高速道路も舞台となっている。

小説の肝は、当時のハイテクを駆使して遠隔指示するところなのですが、誘拐犯人が次々と指示をだすのは別に珍しくない。高速道路というのも、北上する上で東北道の通過点でしかないし。

同市内の別の病院施設に置き去りにされたが、小説では犯行から数日後、幼稚園児を誘拐とほぼ同じ時刻に幼稚園の前で解放していた。

まあ、近くという点だけが一緒ですかね。
とにかく、これで「酷似」とか言われてもなんだかなぁ、という感じ。前述のとおり、この小説のメインは、当時のハイテクを駆使して、全て遠隔で監禁・指示をだすところ。本当に小説を読んだのならば、一番印象に残るのはその部分。枝葉のちょっとした部分なんかを参考にするとは思えない。参考にするなら別の作品がたくさんある。

小説は88年刊行。04年に講談社で文庫化され、ベストセラーになった。

なんか、この文が書きたくて記事にしたんじゃないかと勘ぐってしまう。講談社毎日新聞ってつながりあるんだっけ?
ちなみに、2004年に講談社文庫になって、「この文庫がすごい(ISBN:4796647384)」で1位になってベストセラーになったのは事実ですが、文庫化は1990年に徳間文庫で先に出てます(ISBN:4195691362)。まだ絶版にはなっていないみたいです。

で、小説の方は、文句無しに面白いので、興味を持った人は是非読んでみるべし。このトリックについては、佐野洋の推理日記のシリーズ(ISBN:4061833278)の中で「このトリックは不可能なのではないか」と言われて、作者が反論をした、ということもあったと思ったのですが・・・何巻に収録されているのか忘れた。違ったかな?別の作品だったかな?とにかく、金と技術は必要ですが、当時でも不可能ではなかったと、私も思います。
私が最初に読んだ岡嶋作品がこれだったもので、ちょっと熱く語ってみましたぁ。