GUST NOTCH? DIARY

AR-拡張現実 (マイコミ新書) / 小林啓倫 (asin:4839935645)

内容については、著者が直々にリンクをまとめられていて、下記のリンクを見ていただくと、だいたいどんなことが書かれているのかは想像できると思います。最近の事例まで含めてまとまってます。

ところで、この事例リンク集にもあるのですが、本文の第三章、p.70で

家具小売チェーンのイケアが提供しているアイフォーン用カタログでは、部屋の中にマーカーを置いて撮影すると、対応する家具が現れるという機能を実装している

と書いてあります。事例リンクとしては以下のものです。

これは間違いだと思います。多分、ARの活用場面のコンセプトイメージで、実装はされていないと思います。
6月に idea*idea が取り上げたことで情報が広まり、各方面で「スゴイ!」という感想で話題になっていたのですが、私が調べた限りではアプリケーションの実体が確認できません。

google.com で "ikea augmented catalogue" で検索をしてみても、このアプリに言及している記事はほとんどなく、海外にもかかわらず上記の idea*idea さんの記事が上位に出てくる状態です。
見つかったものの中では、"This is just an idea/prototype" と書かれてました。実際にアプリを使っている様子などはまったくでてきません。

この事例の画像についても、元をたどっていくと、これを作成したと思われるデザイナーのサイトに行き着きます。どの情報もこの画像以外のソースが使われていないのです。

この画像を良く見ると矛盾も見えてきます。左下にあるカタログは2009年カナダ版の表紙です。ここでは商品の値段がドル表記なのですが、右上のiPhone中の画像ではユーロ表記になっていて整合性がとれていません。ちなみに、このデザイナーは Willem de Kooning Academy というドイツの学校の出身です。
技術的な面を考えても、このマーカーのデザインはハードルが高めだと思います。黒枠付きのマーカの方がパターンの検出と同定が簡単だと思われるからです。このマーカでは、白い床や壁に置いた場合を考えるとパターンが単純すぎて、ノイズとの区別がつきにくいと思います。
そういうわけで、私はこの事例はコンセプトであり実装はされていないと思います。技術的にはこのコンセプトを実現可能ではあると思いますが、この事例としては実装されていないということです。
同じようなコンセプトの提案については、他にもいくつか見つけられますが、IKEA が公式に出しているものはないようです。

ちなみに、IKEA 自身もARカタログの可能性については実際に取り組みを行っています。しかし、家具の3Dモデルをカメラ画像に合成して配置し撮影できるだけで、マーカを認識して配置するようなものではありません。

今回の件は、ソースが上記のデザイナーのところに行き着くので、このデザイナーにコンタクトを取れば、事の真偽ははっきりするんでしょう。あ、IKEAに問い合わせる方が早いか。私はそこまでして確認する必要性もないので……。
(2010-08-04追記)
idea*idea さんがネタ元としてあげているサイトからのリンク先に、「残念ながらまだ存在しない、コンセプトの提案」と書いてありました。ポルトガル語で。

(2010-08-04追記終)
(2013-09-01追記)
3年かかりましたが、実現したようです。

(2013-09-01追記終)