GUST NOTCH? DIARY

映画の音響に関する覚え書

先日見た「ヘイトフル・エイト」で、最後にDolby Surround 5.1 というのを見たような気がして、そういう表示は初めてだなぁ、と思っていたらやはり存在するらしい。
ということでどういう場合にそういう表示になるのか?と思って調べたんだけど、結論としては結局分からず。いちおう、覚書として残しとく。

位相差を使って4chを2chステレオ信号に乗せる所謂Matrix方式のQuadraphonicによる、Left, Right, Center, Surround に割り当てるサラウンド方式。フィルムのサウンドトラックに2chのアナログ音声が光学的に記録されていて、プロセッサが4chにデコードする。従来のモノラルシステムしかない映画館でも再生が可能。

特に高周波領域でのダイナミックレンジの改善のために開発され、主に35mmフィルムで用いられた Noise Reduction システム。録音時と再生時に処理が必要。映画のシステムとしては、Dolby Stereo と併用される。

Dolby Stereo で作成された映画などのサラウンド効果を民生向け機器で実現するための方式。Dolby Stereo と同様4ch音声からマトリックス方式で2chにするが、位相差係数が異なるので、最終的にはLeft,Right,Srround の3chとなる。従来のステレオ機器でも2chステレオとして再生が可能となっている。
後に Pro Logic 回路により Left,Right,Center,Surround の4chが取り出せるように拡張され、Pro Logic II、Pro Logic IIx、Pro Logic IIz と発展して IIz では 9.1ch を再生できる。

Dolby Digital は最大6chの独立音声を記録するための圧縮符号化方式。別名AC-3。最初は映画の35mmフィルム用に開発され、AC-3に符号化された情報がフィルムの送り穴(パーフォレーション)の間に2次元コードとして光学的に記録されている。フィルム映画用としては5.1ch(Left,Right,Center,LeftSurround,RightSurround,SubWoofer)がメジャーだが、DVDやBlu-rayなどでは2chなどの場合もあり、Dolby Digital が必ずしも5.1chを指すわけではない。48kHz/16bit のデータを 640Kbps で符号化する。フィルムの場合、従来からの Dolby SR によるアナログサウンドトラックも記録されており、デジタルデータが読めない場合はアナログ音声に切り替わるようになっている。

  • Dolby Digital Surround EX

映画館向けの規格で、Left SurroundとRight Surround のチャンネルからMatrix方式によってCenter Surroundを取り出せるようにし、合計6.1chによるサラウンドを実現する。Dolby Digital と後方互換性があるので、プロセッサが対応していない場合は5.1chとして再生できる。

35mmフィルム用の独立8ch(Left,LeftCenter,Cenre,RightCenter,Right,LeftSurround,RIghtSurround,Subwoofer)を扱える音響システム。両側のパーフォレーションの外側に、バックアップを含む12ch分の情報が光学的な2次元コードとして記録されている。
MDと同じATRACという符号化方式を採用しており、 44.1kHz/20bit のデータを1280kbpsで符号化する。

  • DTS (DATASAT)

DTSではフィルムに音声は記録されておらず、同期信号のみが光学的に記録されている。音声データはCD-ROMとして別に提供される。音声データは DTS Coherent Acoustics 方式で 48kHz/24bitを882Kbpsで符号化するので Dolby Digital より高音質とされる。通常は6chの音声を扱い、Dolby Digital の5.1chとスピーカー配置に互換性がある。

  • DTS-EX

DTS-EX は6.1chを扱う。Dolby Digital Surround EX と同じマトリックス方式でCenterSurround を作り出す方式と、最初から独立した6.1chの音声を持つ方式とがある。

  • DTS 70 mm

もともと、70mmフィルムの場合は6chのアナログ音声をパーフォレーションの外側に磁気的に記録していた。DTS 70mmでは、アナログ音声は記録せずに、タイムコードをより大きく記録し、複数の読み取り装置により冗長性を持たせて信頼性を上げている。DTSと同様、CD-ROMに記録されている6chの音声を再生する。

映画館でのデジタル上映について取り決めている DCI (Digital Cinema Initiatives)の規格によって音声トラックは48KHzまたは96KHzの24bit非圧縮のPCM音声であることが定められている。音声トラックは最大16chまで扱える。

非圧縮である必要があるので、フィルム時代の圧縮方式(Dolby Digital(AC-3),SDDS(ATRAC),DTS(Coherent Acoustics))などは使われない。サラウンドシステムとしては歴史的な経緯もあり5.1chまたは7.1chが主流であり、各チャンネルは独立に記録されている。音声ファイル形式としては SMPTEにより標準化されているMXFフォーマットが用いられる。

5.1ch にさらに2つの独立chを加え、前方3ch、リア4ch、サブウーファーで構成される。

従来の5.1chまたは7.1chのシステムをベースに、天井スピーカーを含め最大64個のスピーカーを配置する立体音響システム。音声オブジェクトという概念で管理され、最大128個のオブジェクトを任意の位置に配置できる。DCIの音声トラックは最大16までなので、5.1chまたは7.1ch以外のデータは拡張音声トラックとして記録されるらしい。そのため、拡張部分が再生できない場合は5.1chまたは7.1chでの再生となる。

高輝度・色再現を可能とする高ダイナミックレンジ映像システム。撮影時から対応機器で撮影する必要がある。

映像はDolby Vision、音響は Dolby Atmos を満たす、Dolby が提唱する映像システム。

IMAXは70mmフィルムを横に使い、1コマ15パーフォレーションで大画面を投影できるシステム。フィルムIMAXの場合サウンドトラックはなく、6chの音声が別の磁気テープに記録されていた。後にDTSと同様に同期信号を読み取り、ハードディスクに記録された6chの非圧縮音声データを再生する方式に変わる。

IMAX DIGITALは、2台の2Kプロジェクタを使用し、少しずらして投影することで擬似的に解像度を上げている。3D上映の場合はそれぞれが左右の映像を投影する。IMAX DIGITALプロジェクタは通常のDCPも上映可能。音声はフィルムと同じ6chだったが、12chの Immersive Sound System が登場した。映像の方も最新規格では 4K Laser Projector が用いられる。

  • THX

THXは音響システムではない。映画の作成から上映に関わるプロセスおよび機材に関する評価基準である。撮影機材や録音機材も評価の対象である。
映画館の場合、座席とスクリーンとの視野角、音量、残響、外部からの音漏れ、環境ノイズの大きさ、などが評価される。

というわけで、「ヘイトフル・エイト」は70mm、35mm、DCPがあったようなんですが、70mmの場合はDTSなのでDolbyの出る幕はないはず。35mm なら Dolby DIGITAL ということで十分なはず。DCPはPCMのはず。ということで、どんなときにわざわざ 5.1ch 表示になるのかはよくわからないのでした。SyncがDTSで音声圧縮がDolbyなんてケースはあるのかしら?
そもそも、7.1がでるまでは、DOLBY SURROUND は民生向けの規格だったんですよね。