こんなエントリが上がっていた。
いやー、論評してる人も、記事書いてる人も、2ch民も、それにTwitterでコメントしてる人も、みんな作品を見ていないのがまるわかり。
見ようと思ってた人が見なくなるのは残念だし、記事に悪意も感じるので、ちょっと擁護してみます。なお、本作は私の中では現在のところ今年見た邦画(30本)中のNo.1です。全78本の中でもNo.2です。
制作費がいくらかかってるのかわかりませんが、確かに興行収入5億ではペイしないでしょう。しかし、作品の良し悪しとヒットするしないは関係ありません。
元記事の評価を見てみましょう。
『プロジェクトX』のような重厚な人間ドラマを期待していましたが、まったくの期待外れ。突貫工事で映画を作ったため、全体的に作りが粗いのです。そもそも竹内の役柄は架空のオリジナルキャラで、はやぶさ帰還とは関係がない。いてもいなくてもいい存在という設定だからガックリです。しかも、無理にコミカルに演じようとして失敗している。もう一つ、唖然としたのは、CGのはやぶさがアニメ声で“僕は今ここにいるよ”“なんだか力が出なくなっちゃった。みんなの声が聞きたいよ”なんてふうにしゃべり出したこと。せっかくの美談が漫画チックな駄作になってしまいました
私は、この評価と記事とその反応に唖然としてるわけですが。
まず、「『プロジェクトX』のような重厚な人間ドラマを期待」したのが間違い。「プロジェクトX」が重厚な人間ドラマを描いているかというのはおいといて、堤幸彦監督なんだから、当然エンタテイメントとして見れるものを作ってくるのは予想できる。それに、「重厚な人間ドラマ」ではなかったけれども決して陳腐でもなかった。きちんとそれぞれの元キャラの熱意や苦悩というものは描かれている。作りが粗いとも思わなかった。
竹内結子演じる主人公は架空の人物ではあるが、モデルとなった人物はいて、複数の人がミックスされたもの。「いてもいなくてもいい存在」では全くなくて、彼女がいるからプロジェクトのバックグラウンドや専門用語が自然に観客に分かるようになっている。ミステリでいうところのワトソン役である。コミカルな部分もあるが、それが失敗とは思わない。
で、一番問題なのは次の部分。「唖然としたのは、CGのはやぶさがアニメ声で“僕は今ここにいるよ”“なんだか力が出なくなっちゃった。みんなの声が聞きたいよ”なんてふうにしゃべり出したこと。せっかくの美談が漫画チックな駄作になってしまいました」というのは、広報としての主人公が作った「はやぶさ君の冒険日誌」(これは実在する)を踏まえて、はやぶさの心境を語ったもの。これを作っている描写もあるし、流れとしては別に違和感はない。声は子供に語りかけるような竹内結子の声。あれが「アニメ声」に聞こえるとはちゃんと映画を見た人の意見とは思えない。
まあ、生瀬勝久とか蛭子能収とかのネットで見てるファンの描写は余計だったかもと思う。
この批評をしている前田有一という人は、「超映画批評」というサイトを運営している人で結構有名ではある。が、その評価には賛否もある。ちなみに、なぜかこの作品の評価は載っていない。
作品の感想というのは人それぞれなので、この人から見たら合わなかったのだろう。それは、それだけの話。上記のサイトでは、「『年に数回程度鑑賞する』お客さんにターゲットを絞った情報提供」を目指しているらしいのですが、この記事になった意見が、「一般的な意見」を代弁しようとしたものなのか、「個人の意見」なのかはよく分かりません。いずれにせよ「駄作」ではないです。他の作品についてもこの人の感想と同じ傾向にある人ならば、この人の評価を信じてもいいかも知れませんけどね。
さて、2つ目の問題は、この評価を玄人の意見としてとりあげた日刊ゲンダイの記者。作品を見てたら少なくとも「トンデモ映画の仲間入りは避けられそうもない」なんてことは書かない。この評価を鵜呑みにして煽るだけの記事ですね。もしかしたら今後続く東映か松竹の回し者で、この作品を貶めるのが目的なのではないかと穿ってしまう。
次はこのスレタイ。「はやぶさが喋りだす演出に観客呆然」って、呆然としたんじゃなくて唖然としたのだし、それは一人の意見であって、一般観客の話はまったくでてこないのにこのタイトル。ま、スレタイは受け狙いだからしょうがないか。
更なる問題は、この記事に反応している2ch民やTwitterで、みんな「CGのはやぶさがアニメ声で喋る」という点にだけ反応していること。まず、上述のように「アニメ声」というのは間違い。「CGのはやぶさ」というのからどういうのをイメージしてるんだか分からないのですが、はやぶさのビジュアルが擬人化されたりはしていません。「カーズ」や「きかんしゃトーマス」みたいなのをイメージしてるなら、とんでもない勘違いです。結局、誰も見てないのに想像で書いてる。
とりあえず、みんな公式サイトの「PRODUCTION NOTE」くらいは目を通してみた方がいいと思うよ。
同じテーマで3つも作品が作られるんだから、どれもが同じようなドキュメンタリータッチだったら意味ないし、最初からドキュメンタリーにはかなわない。何を狙って、どう見せるのかが見どころになるはず。