GUST NOTCH? DIARY

ヒミズ

貸しボート屋の息子である中学生の住田。父親は借金を作って滅多に家に帰ってこない。母親は浮気をしていてついには家を出て行ってしまった。普通の生活を目指していた住田だが、環境は全然普通じゃない。同じように家に問題を抱える茶沢は、そんな住田のことをいつも見ていた。
園子温監督の作品は「冷たい熱帯魚」「恋の罪」と見ている。人が普段見せない内面を過激な描写で描くのが特徴であるが、そういうエログロな描写の問題ではなく、この作品では監督の作品づくりに対する姿勢に対して不快感ばかりが残った。
震災をうけて脚本を変え、5月に石巻で撮影をしたらしい。それが意味のあるものであればそれはいい。だが、全くもって意味はなかった。震災はとってつけただけ。単に話題性を狙ったと言われてもしょうがない。ただ被災地で撮影したかっただけ。監督は自分自身がこれまでは隠していたエゴをさらけ出してしまったのかもしれない。

非日常を描いているはずの原作を、さらにリアリティのないものにしてしまった。まあ、原作は読んでないのだが。
震災で被災した人たちが揃ってホームレスになっている。ホームレスなのにいつも真っ白い服を着た女性がいる。巷では節電に励んでいるはずの時期に電球で飾りつけをする。中学生が一人で穴を掘って大人の死体を埋める。中学生が汚れた格好をして街中で騒いでいるのに職質もされない。これまでの作品もリアリティがあるかといえば微妙ではあるが、今作は震災という現実を入れたせいで、他の部分が目立つ。そして、震災は不可欠なものではなく、なくてもまったくストーリーには影響しない。むしろない方がすっきりするんだからどうしようもない。
まあ、作品の良し悪しは抜きにして、二階堂ふみという女優には注目しておくべきかもしれない。どちらかというと舞台向きかもしれないけどね。
鈴木杏はほんとにちょこっとしか出てなかったな。