GUST NOTCH? DIARY

最近、シネコンでのスクリーンマスクカーテンの作動をやめたことに関する考察

今日、「ゼロ・ダーク・サーティ」を見てて、これまでになく「余白」が気になったのでちょっと調べてみました。
そもそもの発端としては、最近、デジタルシステムの導入に伴い、シネコン各社がスクリーンカーテンの作動をやめて、フルオープンの状態で、主にシネスコサイズのスクリーンにビスタサイズの作品を上映していたりすることにあります。
詳しくはこちらを。

また、このことに関して、Twitter 上では不満を漏らす声も少なくないのです。

私はといえば、当初は「まあ、エッジがちゃんとでるからスクリーンマスクは必要ないのかな」程度の認識だったのですが、「周囲に白っぽいところがあるのはやっぱり気になるなぁ」というように徐々に変わってきました。
そして、今ではスクリーンマスクは必要だと思っています。この考え方を決定的にしたのは「復活 尾崎豊 YOKOHAMA ARENA 1991.5.20」を見た時からです。詳しくはこちらも読んでください。

この作品は1991年のビデオ映像を映画化したものなので、基本的にスタンダードサイズです。しかし、プロジェクタの方はスタンダードサイズでの投影ができないため、2Kプロジェクタの中央部分にのみ画があるという状態になります。そうすると、画のないところにも「黒色」が投影されるので、プロジェクタの投影範囲とその外との違いが分かってしまう、ということが発生します。
私の場合、白いスクリーンが周囲にあることよりも、このグレーの領域の存在の方がよっぽど気になるのです。

さて、ここまでが導入で、ここからが本日の上映についてです。
今日はTOHOシネマズ川崎にての観賞でした。最近のTOHOシネマズはスクリーンカーテンは動かずにシネマスコープのスクリーンのままでの上映になっています。今日もそうだったわけですが、今日は以下のような見え方でした。

何がいいたいかというと、映像の左右に妙なグレーゾーンがあるのです。これは映像の部分が明るくてスクリーンの白い部分に写り込んでいるというのではなく、プロジェクタの投影範囲にかかわらず映像がない「黒い」部分です。
これまではこんなに太い帯が見えていたことはなく、これが気になって仕方なかったので、ちょっと調べてみました。
まず、TOHOシネマズが使用しているプロジェクタ。これはソニーのプレスリリースによると、ソニーSRX-R320という製品のようです。この製品はメディアブロック「LMT-300」を内蔵している形の製品ですので、そちらの仕様も確認します。

すると以下のことが分かります。

  1. 投影解像度は 4096x2160 画素 もしくは2048x1080画素
  2. アナモルフィックレンズにて投影アスペクト比を変えられる
  3. ビスタ/シネマスコープアスペクト比を自動認識し、画像のない部分に黒帯を生成
  4. スクリーンマネジメントシステムにてカーテンの制御が可能

今回の上映では、まさにこの3の黒帯が見えている状態です。ではなぜこの領域ができてしまっているのか?
IMDb の Technical specifications を見ると、「Zero Dark Thirty」は、デジタルカメラ(Arri Alexa M, Arri Alexa Plus)で撮影され、ARRIRAW フォーマットでデジタル処理されていることが分かります。

この ARRIRAW フォーマットは、通常 2880x1620 で処理されるようです。この比率はHD(1920x1080)と同じですが、2Kにする場合にHDからアップスケールするより、こちらからダウンスケールするほうが画質が優れている、と書いてあります。

さて、なんとなく見えてきました。以下をご覧ください。

今回の「Zero Dark Thirty」のデータが2Kフォーマット上にHD比率の「画素数」で作成されているとすると、2Kのエリアの両側にグレーの領域ができてしまうのが納得できます。
しかし、新たな疑問も出てきます。IMDbによると作品のアスペクト比は1.85:1のアメリカンビスタです。すると、本来ならば、上の画像でいう緑色の部分まで映像があることになり、グレーの領域はもっと少なかったはずなのです。このくらいだったら、もしかしたら私も気づかなかったかもしれません。
以上のことから以下の疑念が生まれました。

  • 2K のデジタルシネマシステムでビスタサイズ(1.85:1)の作品を上映している場合、左右両側(あるいは上下にも)には必ずグレーの領域ができているのではないか?
  • Zero Dark Thirty の場合は全体がARRIRAWフォーマットで作成されているようなので画素の欠落はないにせよ、フィルム上映の場合と比べて比率がわずかに異なっているということにはならないのか?(1.85:1 が正しくてプロジェクタの縦は全て使用しているとすると、デジタルの場合は「正しいもの」より僅かに細くなっているのではないか?)

そして、これが一番の疑念ですが、

  • スクリーンカーテンはアナモルフィックレンズに対応した特定の位置にしか動かせないのではないか?

今日の上映の場合、仮にビスタの位置にカーテンを移動しても、グレーのゾーンをすべては隠せないのではないか?ということです。先日のスタンダードサイズの作品の場合もスタンダードの位置までカーテンを動かす方法がないのではないか?
これらが、適切なレンズを準備していないことにより生じているのか、あくまでもアスペクト比は35mm時代からの慣習で示しているだけなのかはわかりません。もしかしたら、見えていないだけで上下にも帯があって、映像の比率は正しいのかもしれません。
あくまでも、観客として観測できる事象からのみの推測に過ぎませんが、もしも正しいレンズを用いることで解決できるのであれば、そこは映画館として妥協してはいけない部分だと思います。
まあ、実際の理由はわかりませんが

  • ちゃんとスクリーンマスクして欲しい

それだけです。
(2013-02-19追記)
Twitter でいただいた情報によると、最近のシネコンの場合、スクリーンカーテンはビスタの位置よりも内側には動かせないことが多いんだそうです。つまり、スタンダードサイズをマスクすることはできない、とのこと。
また、今回の「Zero Dark Thirty」の場合、仮に「スクリーンがビスタサイズになる位置」にカーテンを動かしたとしても、実際の映像のエッジはその内側にありますので、外側に隙間が残ってしまう、ということになるのだと思います。